インド洋に浮かぶ島国スリランカ。温暖な気候が育む豊かな自然に包まれたこの島国には、「トロピカル・モダニズム」と呼ばれる独自の美学を築いた建築家、ジェフリー・バワ(Geoffrey Bawa)の作品が点在しています。
そこで本記事では、“建物は風景の一部であるべき”という考えのもと自然と調和した美しい建築の数々をご紹介。
スリランカ旅行でのホテル選びにぜひお役立てください!
目次
■ バワ建築のホテル5選
└ヘリタンス・カンダラマ
└ヘリタンス・アフンガラ
└ジェットウィング・ライトハウス
└シナモン・ベントータ・ビーチ
└ザ・ブルーウォーター
■ 【番外編】バワ建築の観光スポット2選
└No.11
└シーマ・マラカ仏教寺院
■ まとめ
1929年生まれのジェフリー・バワ(Geoffrey Bawa)は、スリランカ出身の建築家であり、世界的に有名なモダニズム建築の巨匠です。
西洋のモダン建築に自然との一体感を加えた彼のスタイルは美しく、世界中の建築家たちに影響を与えてきました。
バワの建築様式は「トロピカル・モダニズム」と称されます。
西洋の近代建築が持つシンプルさと機能性に、高温多湿な気候の生活文化、そして自然を融合させた美しさが特徴です。
また、白いコンクリートの壁や開放的な通路を活かした自然の調光、岩などの元の地形に寄り添ったやさしい設計は、“持続可能なデザイン”といった現代的な価値観を先取りしており半世紀経った今、再評価されつつあります。
ジェフリー・バワは多くのホテルを設計しました。
それらは煌びやかなラグジュアリーさではなく「自然との調和」を大切にしたデザインで、美しさと心地よさは訪れる人の心に深く残ります。
スリランカ中部、シギリヤの近くに佇むこのホテルは、バワが晩年の1994年に手がけた「バワ建築の最高傑作」ともいわれる存在。
巨大な岩山とジャングルの中に“隠れる”ように設計された建物は、遠目から見るとまるで自然の一部のように見えます。さらに、ホテル内装には石や木、自然光を活かした素材と設計に加え、あえて複雑に作られてた構造が迷路や洞窟のようで滞在中の楽しさも感じられます。
ホテルから車で30分ほどの場所には、世界遺産の「シギリヤ・ロック」や「ダンブッラ石窟寺院」があり、観光の拠点としても理想的。
午前中に観光を楽しみ、午後にはホテル内のインフィニティプールやスパなどでホテルステイを満喫するメリハリのある旅が実現できます。
スリランカ南西海岸に位置し、インド洋を望む白砂のビーチに面したヘリタンス・アフンガラ。
このホテルの象徴とも言えるのが、インド洋と視覚的につながるインフィニティプールです。
世界で初めてつくられたインフィニティプールで、バワはこのプールをただ泳ぐための施設としてではなく「海と空と建築をつなぐ境界のない風景」として設計しました。
ロビーから外を見たとき、正面にはプールと海、空が繋がっているような見事な風景が広がります。
また、アフンガラ周辺には、ベントータやゴールといった観光地へのアクセスも良好。
スリランカ伝統のマスクづくりが体験できるアンバランゴダや、ゴールの旧市街を巡る日帰り旅もおすすめです。
インド洋を望む南端の街ゴール。オランダ統治時代の面影が残る港町の切り立つ海岸線に沿ってそっと建っているのが、ジェフリー・バワ代表作のひとつ、ジェットウィング・ライトハウスです。エントランスを抜け、広がる柱のない開放的なロビーと、その先に続くインド洋の大パノラマは映画のワンシーンのような景観で魅了されるでしょう。
ジェットウィング・ライトハウスでは、ホテルの構造や装飾にスリランカの歴史的エピソードが織り込まれています。
特に印象的なのが、ロビー横の階段に設けられたブロンズのレリーフ彫刻。ここにはポルトガル軍とシンハラ王国の戦いの情景が力強く描かれており、まるで歴史を歩いて昇っていくような感覚を覚えます。
さらに、ジェットウィング・ライトハウスは2025年3月にテレビCMのロケ地にも使用され、注目が高まっています!
海と歴史、建築美が交差するスリランカ建築の集大成的存在ともいえるこのホテルは是非とも訪れてほしい場所です。
スリランカ南西部、海とベントラ川に挟まれた豊かな自然の中に佇むシナモン・ベントータ・ビーチは、スリランカ初の本格的ビーチリゾートとして1967年にジェフリー・バワが設計しました。低層の建物が、緑の庭園の中に広がるように配置され、海からの風が心地よく吹き抜ける設計は“トロピカル・モダニウム”のさきがけともいえます。
内装はスリランカの伝統工芸が多くあしらわれており、ロビーの天井にはエナ・デ・シルヴァのバティック作品、壁面やオブジェクトにはラキ・セナナヤケによる孔雀の彫刻や絵画が使用されています。リゾート感極まる建築と伝統工芸の融合によりホテル全体が美術館のような空間となっています。
シナモン・ベントータ・ビーチは開業50年の2017年から2019年にかけて、ジェフリー・バワの弟子チャンナ・ダスワッテの手により全面改修されました。バワのこだわりを忠実に再現しながらも、現代的な快適性を備えたリゾートへと生まれ変わりました。
スリランカ西海岸沿いに佇むザ・ブルーウォーターは、ジェフリー・バワが1996年から1998年に手がけた最後の建築作品です。
内装は極限まで削ぎ落とされたミニマリズムが特徴で、木など石の自然を活かしたシンプルな美しさがあります。
また夕方には、建物から海岸沿いに向けてずらりと並ぶヤシの木が水面に映る風景はビーチリゾートならではの魅惑の空間です。
自然と建築が一体化しているこのホテルですが、コロンボから車で約1時間というアクセスの良さが魅力。それでいて、都会の喧騒から完全に切り離された環境で静かなリゾートステイが可能なため、スリランカ旅行を締めくくる宿泊地に最適です。
ホテル建築で有名なジェフリー・バワですが、彼によって生まれた美しい空間は他にもあります。
そこで、バワ建築を“泊まる”だけでなく“巡る”という視点から、スリランカ旅にぜひ加えたいホテル以外の名建築スポットをご紹介します。
No.11(ナンバー・イレブン)は、ジェフリー・バワがコロンボに構えた自宅兼アトリエであり、“バワ建築を体験できる”貴重な場所です。バワが約40年間を過ごし増築を重ねたNo.11は、彼の建築哲学がもっとも凝縮された空間のひとつといえます。一見するとごく普通の住宅ですが、中に入ると階段や中庭が巧みに造られており、外からは想像もできないほどの奥行きと立体感があります。
現在は予約制のミュージアム兼ゲストハウスとして一般公開されており、数部屋のみではありますが、宿泊も可能です。バワがかつて使用していた椅子に腰かけ、同じ空間を味わう特別な体験ができるNo.11はバワ建築を堪能するスリランカ旅ではかかせないスポットです。。
ジェフリー・バワはホテルだけでなく寺院の設計も手がけており、シーマ・マラカ仏教寺院はコロンボ市街地の中心にありながら、驚くほど静謐な時間が流れる場所です。
もともとは沈んでしまった古い修行所を再建するプロジェクトとして始まり、彼の手によって1976年に現在の形に生まれ変わりました。風が通り抜け、光が反射し、水面に広がる建物のシルエットは、自然と調和し深い癒しと安らぎをもたらします。
また、夜になるとライトアップされコロンボの街に溶け込んだ違った印象をあたえてくれます。
観光地を巡るだけの旅では物足りない人にこそ、バワ建築を堪能できるスリランカ旅行はおすすめです。建築やアートに興味がなくても、自然と調和した心地よさと静けさに包まれた空間に身を置くだけで、きっと何かを感じ取ることができるはず。
スリランカを訪れる際は、ぜひバワの世界を体験してみてください。
タビックスナビ編集部